東京地方裁判所 昭和42年(借チ)1031号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔決定理由〕1 本件の改築は……四棟の既存建物のうち最も古い……平家建居宅を取りこわし新たに二階建居宅(ただし、建築面積は約半分の二三平方米余に減少する)を建築するものである。
2 残る三棟の建物は昭和一一年から同一四年までの間に建築されたものであるが、前記(イ)の建物と異りまだ相当の耐用年数があり、三棟のすべてが朽廃に至るべき時期はかなり遠いと見られる(なお、右各建物は利用上の独立性をもち主従の別は認め難い)。
3 本件賃貸借の経過は申立人主張のとおりであるが、申立人は昭和三八年一一月中前記の調停に基き相手方に対し更新料として金二〇万円を支払つた。なお、本件賃貸借の賃料は右調停において昭和三八年一一月から一カ月九二四〇円(3.3平方米当り七〇円)と定められたが、同四〇年二月頃から一ケ月一万一八八〇円(3.3平方米当り九〇円)となつて現在に至つている。
以上の事実に基いて考えるに、本件の改築は現存の四棟の建物のうち一棟についてなされるもので、その規模は小さい。
賃貸借の残存期間は約八年であり、相手方はその弟のために本件土地を必要とする旨主張する。右期間満了時における更新拒絶の正当事由の有無を現在予測することは困難であるが更新の可能性はかなり強いと見られる(もし期間満了により借地権が消滅するのであれば、建物の買取価格の増大が相手方の主たる損失ということになるのであろうが)。
そこで本件の改築が更新後における借地権の消長に及ぼすべき影響を考慮しなければならないが、残りの三棟の建物の耐用年数はかなりあるので、本件の改築がなくても地上建物の朽廃による借地権の消滅がそれ程近い時期に到来するものとは思われない。ただ、改築される建物は既存の建物より命数が永いと考えられるから、借地権の消長に影響のあるべきことは否定できないと考えられる。
本件では、改築の及ぼす利害の主たる点は上記のとおりであるが、これに申立人が昭和三八年中更新料として二〇万円を支払つていること、右改築の規模などの事情を考慮した上、鑑定委員会の意見を参酌し、財産上の給付として借地権価格(鑑定委員会の意見に従い3.3平方米当り一一万五五〇〇万円とする)の約一%当る金一五万円の支払をさせるのが相当と考える。
なお、賃料については右委員会の意見のとおり増額の必要がないものと認める。(安岡満彦)